2000年5月と6月に鹿児島県トカラ列島中之島で採集したオウギガニ科カニ類5種計36個体につき,公定法にて毒性を調べたところ,供試したウモレオウギガニ Zosimus aeneus 16個体中9個体およびムラサキヒメオウギガニ Xanthias lividus 4個体すべてから2.0 MU/g以上のマウス毒性が検出された.毒力はいずれも低く,前者は2.1~11 MU/g,後者は2.8~8.6 MU/gであった.LC/MS分析により,ウモレオウギガニでは総毒力の約4割が tetrodotoxin (TTX) であることが判明し,加えて残余毒力の相当部分を11-oxoTTXが占めることが示唆された.一方,ムラサキヒメオウギガニの場合,TTXや既知の麻痺性貝毒成分は検出されず,毒本体の特定には至らなかった.