既存添加物クワ抽出物は,天然由来の製造用剤として,平成8年に既存添加物名簿に収載された食品添加物である.既存添加物製品の基原植物の確認は,品質や安全性確保の上から極めて重要であるが,クワ抽出物の基原はクワ科クワ( Morus bombycis Koidz.)の根茎の皮と記載されているものの,実際の製品がどのクワ品種の成分組成に一致または類似するのか確認されていなかった.本研究では,数種の国内クワ栽培品種の標準植物の根皮乾燥物から抽出物を調製して成分組成を調べ,既存添加物クワ抽出物として提供された製品および生薬ソウハクヒ製品の成分組成と比較することにより基原植物の検討を行った.その結果,既存添加物クワ抽出物製品の基原は,定義の記載とは異なり,国内でマグワ M. alba とされている栽培品種またはその交雑種と推定された.また, M. alba が基原と定義されている中国産クワを原料とする生薬ソウハクヒ製品とは成分組成が異なった.LC/MSでのピーク面積を説明変数として行った主成分分析の結果でも同様の結果が得られた. なお,本研究実施以後,クワ抽出物は,平成23年に既存添加物名簿から消除される品目の1つと確定された.