2008年10月に長崎県でフグ中毒が発生した.中毒残品の筋肉からDNAを抽出精製し,PCR増幅したミトコンドリアDNA 16S rRNAおよびシトクロム b 部分領域の塩基配列はカナフグのそれと一致した.中毒残品の肝臓試料から1,230 MU/gの毒性とテトロドトキシン(TTX)が検出されたことから,本中毒はカナフグによるTTX中毒と判断した.中毒原因個体の肝臓試料からこれまでの報告を上回る猛毒レベル(≧1,000 MU/g)の毒性が検出されたため,九州沿岸で漁獲されたカナフグ13検体の毒性を調べた.12検体が有毒で,これまで無毒とされていた腸や卵巣も毒性を示し,毒性が不明だった腎臓,胆のう,脾臓からは弱毒レベルの毒性が高頻度で検出され,日本産カナフグの毒性の見直しが必要と考えられた.