アフラトキシンB群(AF-B)に汚染した15試料とアフラトキシンB,G (AF-B,G) 両群により汚染した10試料の輸入インドネシア産ナツメッグについて,AF産生菌を分離し,そのAF産生能と分布を調べた.その結果,総AF汚染濃度が高い試料ではAF産生菌数 (CFU/g) が多く,低い試料ではAF産生菌数 (CFU/g) が少ない傾向があった( r =0.752).ただし,分離菌株のYES液体培地におけるAF産生性をTLCおよびポストカラムフォトケミカル反応によりHPLCで調べたところ,高濃度汚染の試料から分離された菌株が必ずしもAF産生能が高いとは限らなかった.AF-B,G群に汚染した3試料からAF-B,G群産生菌を分離した.これらの菌種は形態学的特徴,37℃と42℃における発育速度の相違,および遺伝学的解析に基づき, A. nomius と A. bombycis と同定された.農産物のAF-G汚染の原因菌としては A. parasiticus が注目されてきたが,今回の結果から,輸入インドネシア産ナツメッグにおいては A. nomius とその近縁種である A. bombycis がAF汚染の原因である可能性が示唆された.一方,AF-B群産生菌はすべて A. flavus と同定された.