食品および農産物のDNA分析をより簡易なものとするため,分析試料の粗抽出液からDNAを直接PCRで増幅し,それをリアルタイムPCR装置でモニタリングするダイレクトリアルタイムPCRについて検討を行った.既定の組織溶解液による前処理と開発したマスターミックスによるリアルタイムPCRを組み合わせてダイレクトリアルタイムPCRシステムとした.50種類の食品および農産物試料の分析を行ったところ,いずれの試料においてもPCRの阻害は認められず,開発した手法が多様な試料に適用可能であることが確認された.次に,DNAの一塩基置換を判別するモデル評価系を構築し,ダイレクトリアルタイムPCRの反応特異性を評価した.その結果,ダイレクトリアルタイムPCRにおけるプライマーの選択性は,精製DNAを用いる通常のPCRと同等であった.最後に,遺伝子組換え農産物を一定の濃度で含む試料を用いてダイレクトリアルタイムPCRの検出感度および定量性について評価を行った.分析の結果から,ダイレクトリアルタイムPCRによって標的の高感度な検出と高精度な定量が可能であることが明らかとなった.