わが国においては食品に含まれるヒスタミンの基準値は示されておらず,残留農薬のような公定分析法は現在まで示されていない.われわれは,食品衛生検査指針に示された方法(ダンシル化体を蛍光検出器付液体クロマトグラフ(LC-FL)で測定)を参考に検査を行うなか,ヒスタミン検出時の確認分析法としてダンシル化体を液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)で測定してきた.今回,定量限界を5 ppmに設定して,試料として鮮魚を用いてLC-FL法およびLC-MS/MS法で添加回収試験を実施し,選択性,真度(回収率)および精度を評価した.また,実試料にて両分析法で分析した結果を比較検討した.その結果,ダンシル化ヒスタミンをLC-MS/MSで測定する本LC-MS/MS法は,特に夾雑成分が多い魚類の加工食品の分析においても選択性に優れ,誤検出のリスクを回避できる有用な試験法であることが示された.