本稿では,埼玉県南東部見沼田圃の耕作放棄地に注目し,植生分布の特徴とその成立要因を解明した.空中写真判読および植生調査を行った結果,1998年には調査地の大部分をヨシ群落が占めていたが,それ以降多くがセイタカアワダチソウ群落に変わり,ヨシ群落は水域の周辺に限定的に出現していた.地下水位,微地形,および土壌特性を対照すると,ヨシは地下水位が高いところ,セイタカアワダチソウは地下水位が低いところで群落を形成しており,地下水位が高くても,地表面の勾配や土壌硬度が大きいところには,セイタカアワダチソウ群落が出現することがわかった.こうした植生分布の変化は,水田耕作放棄による影響,2000年に造成された水域の影響,ならびに踏圧の影響によって生じたものと考えられた.