本研究では,2000年7月4日に東京で観測された局地豪雨を対象に,GPS可降水量とヒートアイランド現象に着目した気象観測データの解析を行った.その結果,この日,大気の状態は不安定で,平野スケールの地上風の収束場が都心に位置しており,山岳から都心に移動してきた降水系に伴う発散風と海風としての南風の局所的な収束が都心で生じていたことが確認された.さらには,可降水量の増加域は降水域と一致しており,その値は降水の数時間前に増加し,約1時間前に最大になる傾向にあったことがわかった.しかしながら,ヒートアイランド現象は明瞭に見られたものの,それに伴う都心での明瞭な水蒸気の集積は認められなかった.本事例の場合,ヒートアイランドが東京で強い上昇流を引き起こしながら水蒸気を集積し豪雨を発生させたと考えることは難しい.