電波暗室の側壁用の材料としては, 入射角が0°~70°程度の範囲で前面の定在波比が1.1以下となる厚さの薄い広帯域形電波吸収体が要求される. 誘電性損失材料と磁性損失材料を組合せた従来の吸収体は, 厚さは薄いが斜入射特性に改善の余地があった. 本研究では, 電波暗室の側壁用としての垂直入射および斜入射の両特性に優れ, かつ厚さの薄いUHF帯以上用吸収体を得るために, 誘電性損失材料と磁性損失材料を組合せたピラミッド形吸収体を収れん円法によって設計した. その結果, 従来の誘電性損失材料と磁性損失材料を組合せた吸収体に比較して, 入射角70°まで前面の定在波比を1.1以下とするために必要な吸収体の厚さは0.46 (TE波), 0.47 (TM波) 倍に改善された. 縮小モデルを用いた散乱特性測定によれば, ピラミッドの長さに対する底辺の一辺の比を0.45程度にとることにより, 散乱特性の良好なものが得られることも判明した.