「見ながら話す」ことは電話発明以来の夢であるが, この技術を実現させるためには従来のアナログ電話回線に代る公衆ディジタル回線網が必要である.現在各国で進められているISDNは, このような新技術, 新サービスの発展のための好機であり, 過去20~30年にわたって蓄積されて来たディジタル信号処理技術を誰でもが利用できる形で提供することは, 今まさに多くの技術者に課せられた課題である.本論文においてはISDNにおける狭帯域ディジタル回線, 特に64kb/sを利用することにより可能となる近い将来のビデオ通信システムと, このために基本となる動画像符号化方式について述べる.動画像信号をこのような狭帯域で伝送する場合には, ある程度の符号化劣化を考慮せねばならず, このためには視覚特性の利用が非常に効果的である.本論文においては, 輝度信号と色差信号間の相互マスキングを利用する方法について, その効果を論ずる.