人間の類似文字判読に関わる諸問題を定量的にとりあつかうための一手法とその成果を紹介する.混同を生じさせやすい手書きカタカナを材料として, 判読する際に人間が手がかりとする特徴を用いてアイテムカテゴリー化し, 人間の読みラベルを外的基準とする数量化理論第II類を実施した.その結果, 人間の判読ラベルを高い精度で予測することができ, あわせて各特徴の判別への寄与の度合いをとらえることができた.しかも, この手法は眼球運動や反応時間の計測という心理学実験によっても妥当であることが確かめられた.これを書き手の意図と読み手の判読それぞれに適用することにより, 人間の手書き文字を媒介とした巧妙なコミュニケーション方式を分析することもできた.この手法を用いて, OCRの判読結果の評価を行うことも可能であり, また, 英数字・カナ混在や漢字・カナ混在における類似文字識別の問題にも有益な情報をもたらすことができると考えられる.