スポラディックE層によって反射された近隣諸外国のFM放送波が我が国のテレビ放送波に混入し, 毎年5月~8月頃, 輝度ビート, 色ビート妨害などの受信障害が発生する.本論文は, このスポラディックE層に基づく受信障害の改善を目的とし, 受信信号中に含まれる妨害波を回路的に除去する改善方法について述べたものである.テレビ信号がDSB伝送されている周波数領域に妨害波が混入した場合, 直交同期検波出力には妨害成分のみが現われることを利用して妨害波を抽出し, 打ち消し除去する.この方式の基礎実験を行い, 副次的な画質劣化なく40dB以上の妨害波抑圧が可能なことを示した.さらに, 抑圧量を確保するのに必要な設計資料を得るため, 振幅誤差, 位相誤差および遅延誤差の影響を解析し, 実用的な抑圧量として40dB以上を得るためには, それぞれ0.1dB, 0.1°, 数10ns以下の精度が必要であることを明らかにした.