塑性論の境界値問題への適用は, 弾性成分を無視した場合や, 一軸応力, 捩れ, 中心対称の如き簡単な場合に行われているに過ぎない。著者は塑性変形理論の立場で一般の二次元境界値問題の解析法を提案した。本方法は弾性歪と塑性歪が何れも無視出来ない弾塑性問題に有効である。独立変数として x , y の代りに共軛複素数を採用することは計算を著しく簡易化し, 又等角写像の導入も容易にする。 解析は摂動法に基づいており, 第0近似は弾性解に相当する。例として円孔を有する薄い無限板が無限遠で一様な張力を受けている場合を解いた。 結果によると, 円孔の最大引張応力の集中度は外力をますと弾性解の値3より次第に減少するが, 最大圧縮応力の集中度は1より殆んど変らない。円孔側部の引張応力は円孔の辺より僅か離れた点で最大となることは注目に値する。残留応力は円孔周辺で圧縮応力を残し, 円孔の側部で円孔半径の25%外方までは圧縮応力が生じ, それより外方では引張応力を生ずることが判つた。