本研究の目的は, 15歳から17歳までの男女高校生を対象に疾走能力および疾走動作の発達を横断的に把握し, この時期における疾走動作の特徴を明らかにすることであった. その結果は以下のように要約される. 男子は疾走速度が15歳と17歳間, ピッチが15歳と16歳および15歳と17歳間でそれぞれ有意に増大したが, 女子は疾走速度やピッチなどの疾走能力に関して有意な変化は示さなかった. 男女とも15-17歳の全年齢において疾走速度と有意な相関関係がみられた動作要因は, 脚全体の最大スウィング速度のみであった. また脚全体の最大スウィング速度は, 男女とも17歳が15歳よりも有意に大きい値を示した. 脚全体の最大スウィング速度に関係している動作要因の男女の特徴は次のようであった. すなわち, 男子では股関節の最大伸展角速度は, 17歳が15歳よりも有意に大きいものであり, 接地中の膝関節の最大伸展角速度は15-17歳の間で有意な変容がみられなかった. このことから, 男子の疾走動作は, 17歳の方が15歳よりも股関節の伸展速度を有効に脚全体の最大スウィング速度へ変換したものであったと考えられる. 一方女子では, 接地中の膝関節の最大屈曲角度は15歳が17歳より有意に小さく, その最大伸展角速度は17歳が15歳よりも有意に大きいものであった. このことから, 女子の疾走動作は, 接地中の膝関節の伸展動作が大きいものであり, 脚を十分に固定できず脚全体の最大スウィング速度の原動力となる股関節の伸展速度を効果的に利用できなかったと考えられる. また, 接地中の膝関節の最大屈曲角度は女子が男子より有意に小さく, その最大伸展角速度は女子が男子より有意に大きい値であった. 以上のことから, 15歳から17歳にかけて男子では疾走速度を高めるような疾走動作の変容がみられたのに対して, 女子ではみられなかったことが示唆された. また, 女子は男子よりも接地中の膝関節の伸展動作が大きく, 上下動の大きい疾走動作であることが示唆された.