本研究では, 歩行中の身体を逆振り子にモデル化することにより, 高齢者の歩幅を決定する要因について検討した. 高齢者9名に, 自由歩行, 大股歩行, 最大努力による大股歩行を実施させた. 歩行中の身体を逆振り子にモデル化し, その挙動と地面反力の動態を手がかりにして, 歩幅の増大にともなう歩行特性の変化を検討した. その結果, 歩幅の増大にともない振り子の振れ幅は増加し, 接地後大きな地面反力が生じる際に振り子の脚長は縮むこと, その後伸びながら推進力を発揮していることが認められた. これらのことは, 大きな歩幅を獲得するためには, 接地足を中心にして, 身体を後方から前方へと大きく逆振り子型に回転させることが重要であり, そのためには, 下肢の伸張―短縮サイクル運動を遂行する能力が極めて重要な役割を果たすことを示唆するものである.