本研究では, 同一の競技チームに所属し, 日常的に同様な筋力トレーニングを実践している集団を対象にし, 1RMの個人差の小さい等質的な集団であるか否かを確認した上で, (1) 1RMと3種の%1RMにおける繰り返し回数およびI-N slopeとの関係を検討すること, (2) NtotalとI-N slopeの相違を神経―筋機能と筋の組織化学的特性の面から検討することを目的とした. 検討に際して, 1RMの個人差の大きい異質集団を対象とした著者らの先行研究 (池田・高松, 2005) との比較を行った. 上述の目的を達成するために, 健康な男子大学生サッカー選手 (1年生) 15名 (年齢 : 18.8±0.4歳, 身長 : 174.3±3.4cm, 体重 : 66.1±2.9kg) を対象として, 等尺性最大膝伸展力 (Isom.max) とIsom.max発揮中における力の発揮速度 (RFD), 動的最大膝伸展力 (1RM) と1RMの90%, 70%, 50%での負荷強度における繰り返し回数 (N90, N70, N50), 大腿四頭筋の筋断面積 (CSA) および筋の組織化学的特性を測定した. なお, 本研究における1RMの変動係数は, 著者らの先行研究と比較して低値を示したこと, および, 2つの研究における1RMの分散は異なることが認められたことなどから, 本研究の被験者は1RMの個人差の小さい等質集団であることを確認した. 本研究における主な結果は以下の通りである.(1) 著者らの先行研究では1RMとN90, N70, N50およびNtotalとの間にいずれも有意な負の相関関係が認められたが, 本研究では1RMとN90との間にのみに有意な負の相関関係が認められた. (2) 著者らの先行研究ではNtotalとI-N slopeとの間に有意な正の相関関係が認められたが, 本研究では2つの指標間に密接な関係は認められなかった. (3) 本研究では, NtotalとRFDとの間に有意な負の相関関係が認められ, I-N slopeと%Fiber area (TypeI) との間に有意な正の相関関係が認められた. 以上の結果から, 1RMと3種の%1RMにおける繰り返し回数, NtotalおよびI-N slopeとの関係は, 対象とする被験者の1RMの個人差の大きさによって影響を受けること, NtotalとI-N slopeは, それぞれ繰り返し回数に関わる異なる能力を評価していること, などの可能性が示唆された.