本論文は,パートナーロボットが状況に適した知覚を実現するために,生態心理学における知覚-行為循環の概念に基づいた知覚システムを提案する.パートナーロボットのように自律動作可能なロボットは,環境を計測するために多種多様なセンサを搭載しており膨大な情報を計測することが可能である.しかし,人間のように柔軟な行動を実現するためには,膨大な情報の中から瞬時に直面する状況に適した情報を知覚しなければならない.本研究は,ロボットが人間のように柔軟な知覚-行為を実現するために,人間の知覚システムに着目し,生態心理学の分野で提唱されている知覚-行為循環の概念に基づいたロボットのための知覚システムを構築する.具体的には,網膜構造に基づく中心視モデルと知覚-行為循環に基づくスパイキングニューラルネットワークを用いた手法を提案し,測域センサを用いたパートナーロボットの人間追従実験を通してロボットの知覚システムについて検証した.実機実験を通して,知覚のための構造を用意することで必要な情報を直接的に知覚することが可能であり,スパイキングニューラルネットワークを用いることで予測に基づく知覚の実現とノイズに対する耐性向上を示した.