本論文では,状況に依存したメンバーシップ関数の類推による推定法を提案する.提案手法では,異なる状況における同じカテゴリを表わすファジィ集合のメンバーシップ関数間の類似性(アナロジー)をメンバーシップ関数間の写像で表わす.アナロジーは異なる状況における同じカテゴリを表わすファジィ集合のメンバーシップ関数が同定されていれば,これをもとに近似写像を求めることができる.そして,既にカテゴリを表わすファジィ集合のメンバーシップ関数が同定されている状況が存在すれば,この状況におけるメンバーシップ関数とアナロジーとして近似された写像を用いて,異なる状況において同じカテゴリを表わすファジィ集合のメンバーシップ関数を推定することができる.本論文ではまた,提案手法の有効性について実験的に検証する.実験ではアナロジーを多項式で近似し,予備実験としてアナロジーを多項式で近似する場合に適切な次数を検証する.次に,類推によって状況に依存したメンバーシップ関数を推定する.そして,被験者がメンバーシップ関数を直接同定する場合と比べ,類推を用いることでメンバーシップ関数の同定に必要な情報を被験者に尋ねる回数を減らし,被験者が同定したメンバーシップ関数と同様なメンバーシップ関数を推定できることを示す.