近年,橋梁維持管理の必要性が高まる中,一方では,優秀な維持管理技術者の不足や予算削減により,持続的な維持管理が困難となっている.維持管理における費用削減と橋梁の安全性を向上させる方法として,長期的な維持管理計画の策定が試みられており,実用化に向けた研究がなされている.しかし,劣化予測などの不確実性から生じる計画変更の必要性やコスト平準化のような課題が存在する.本論文では,長期的な維持管理計画策定における意思決定支援システムの構築を目指し,不確実性による計画変更への対応方法を提案する.提案手法では,遺伝的アルゴリズムを用いて予防保全を考慮し,補修年度を前倒しした計画を策定する.このとき,有用な準最適解が複数存在することから,遺伝的アルゴリズムにより得られる解には曖昧さが存在する.本論文では,その曖昧さに着目し,策定された計画に対して数値シミュレーションを用いることで,橋梁の安全性を維持しながら補修年度を変更可能な期間の推定,および提示することを試みる.推定により得られた変更可能な期間を用いた意思決定によって維持管理業務を遂行することで,不確実性に対してフレキシブルに対応できると考えられる.数値実験として,複数橋梁に対する維持管理計画を策定することにより,提案手法の有用性を検証する.