人の意思決定構造を知り,意思決定を分析することが可能になれば,その人の本当に求める解を見つけ出すことができたり,集団による議論の円滑化を行うことが可能となる.また,悪い結果を得た場合の原因究明や,良い結果を得た場合の立役者の発見,そして今後の組織活動の改善へとつなげることが可能となる. 集団の分析までを視野に入れた既存の集団意思決定法として,集団意思決定ストレス法があるが,この手法は2つの問題点を持つ.1つは「必ず最高格付けを得てしまう見解」が存在することであり,もう1つは「絶対評価法の意思決定問題に適用不可能」である.本論文では,これらを解決する新しい提案を示し,さらに提案手法を用いた集団意思決定分析法を提案する. 提案する新しい手法は,集団内の各個人が持つ見解間の距離を,集団内の全メンバーで均等になるように格付け(重み付け)を調整する.見解間距離が均等になることで最終的に決まる集団案への貢献度を平等にする.貢献度が平等であれば,各メンバーの納得を得やすい. 見解間距離均等法では,必ず最高格付けを得てしまう解は存在せず,皆の中心的見解であれば格付けが高くなり,他者から離れた見解ほど格付けが低くなる. さらに絶対評価法への適用が可能となり,提案手法はAHPが持つ選好順位逆転の問題に対応できる手法となった.集団意思決定の手法として,より汎用性の高い手法であると言える. また,見解間距離均等法では「格付け値」と「VDI」という2種類の客観的な値が得られる.格付け値が高いほど,その個人が集団内で中心的見解を示していることを示し,VDI が低いほど,その集団内のメンバーの目的認識(議論の方向性)が一致していることを示す.これらを用いることで,その集団の意思決定がどのようになされたかを分析することができる. 本論文では,格付け値とVDI の情報から,集団を大きく4つに分類できることを示した.この分析による情報が議論を円滑にするための支援となることが期待できる.また,本分析手法は既に結論が出た事後の分析も可能である.この場合,決定した事項に対する結果が出ている場合があり,分析を行うことで,その結果をもたらした原因を探ることが可能となる.