我々はロボカップサッカー中型ロボットリーグ(以下,MSLとする)での適用を想定し,球体を用いた全方向移動機構の開発を行った.MSLに参加する多くのロボットは,オムニホイールと呼ばれる車輪の円周上に複数個のフリーローラを取り付けた特殊車輪を用いて全方向移動を実現している.オムニホイールは容易に全方向移動を実現できるが,一方で使用環境が限定されることや走行面の段差や摩擦の変化に対して走行安定性を失いやすい等の欠点がある.MSLにおいても走行面を完全にフラットにするために,フィールドカーペットの下に板を敷き詰める等の対策が行われている.我々はこれらの課題克服を目指し,MSLだけでなく実用的な産業応用を視野に入れた移動機構の開発を行った.試作機を用いた外乱に対する走行実験や,積載重量の増加に伴う移動精度の検証を行うことで走行性能の評価を行った.