ハイドロールの接触還元の際の反応の難易を検討するため,構成糖であるグルコース,マルトース及びフラクトースについて試験を行なった。 (1)ブドウ糖につき触媒濃度の2.5%,pH3.5,5.58.5の条件下で反応を行なった。酸性側に比ぺ,アルカリ性側では比較的速やかに反応が終了する。また残糖値もアルカリ性側では低い値であった。ペーパークロマトグラフィーによる定性試験の結果は,いつれのpHの場合もソルビトールの他に二糖類,三糖類に相当する糖アルコールの生成を認めた。 (2)マルトースについて触媒濃度2.5%,pH2.0,5.5,11.0の条件下で反応を行なった。強酸性下ではマルトースの一部が加水分解を起し,グルコースが未反応のまま残存し,約5%の直糖値を示した。全糖値は中性,アルカリ性側の45%に対し,pH2.0の場合には約1/2の25%であった。このことは供試マルトースの約半分が加水分解されたことを示唆する。ペーパークロマトグラフィーによる定性試験の結果,いつれのpHの場合もマン.=トールの他ソルビトール及び三糖類に相当する糖アルコールが生成されることを認めた。アルカリ性反応の場合もマルトースは一部加水分解されてグルコースを生ずるが,約2時間の反応中に還元が進み,最終的には直糖は1.05%という低い値であった。 (3)フラクトース単独およびフラクトースとグルコースとの混合物(1:1)について触媒濃度2.5%,pH5.5の条件下で還元を行なった。フラクトースはグルコース及びマルトースに比べて反応は比較的早く終了し,残糖値も極めて低い値であった。グルコース及びフラクトースの混合物の場合は両者単独の場合の中間的な反応経過を示した。ペーパークロマトグラフィーによる定性試験の結果,フラクトース単独の場合には主としてマンニトールを生成し,またフラクトース及びグルコース混合物の場合にはソルビトール,マンニトール並に微量のオリゴ糖アルコールの生成が認められた。 (4)反応液の着色度は,純度の高い糖を用いたので,特に反応前後の差は認められなかった。