澱粉製造工程に於いて生成する渋は澱粉の品質歩留に甚大なる影響を及ぼすものとみて,渋の生成条件について検討した。この試験を要約すると, 1.pH4に於ける蛋白の等電点で,最も多量の渋が生成しpH5になると著減した。この事から摺込液のpHは常にpH5より高く保つ必要がある。 2.石灰法を実施する場合,アルカリ性側に於いて起る渋生成現象を追求し; この原因が,甘藷中の可溶性ペクチンと石灰との結合物であるペクチン酸石灰の沈澱であり,沈澱に於ける渋生成はペクチン酸石灰に随拌されて沈澱する蛋白其他の不純物であることを知つた。 3.澱粉の品質悪化の一成分としてpolyphenolの酸性側に於ける行動を追求し,これが蛋白のpHによる行動と一致し,低pHではその殆んどが沈澱物中に移行することを知つた。 以上の試験は現澱粉製造工程に於けるpH管理の重要性を示唆したものであるが,本試験が澱粉製造の技術向上のため些かの参考ともなりうれば幸甚である。