車糖に5.10.20%粉末ぶどう糖を混入した混合糖について,吸湿験並びに倉庫貯蔵試験を行い,その変質現象を検討した結果微生物の消長については,次のように要約される知見を得た。(1)各試料の生菌数は,一般に対照の車糖に多く,粉末ぶどう糖には比較的少なかつた。従つて試験当初の混合糖に於ても,粉末ぶどう糖の混入量の多いもの程生菌数は少なかつた。(2)等温等湿(30℃,R.H81.1%)密閉室に於ける吸湿試験の結果,混合糖は混入率の増大に伴い,吸湿水分量は増すが,微生物の消長は,吸澤水分量と必ずしも比例しない。糸状菌類及び『かび』類は一定の傾向を示さないが,酵母数は,粉末ぶどう糖の混入量の多い程少い傾向であつた。(3)倉庫貯蔵(7月13日より9月11日迄の2ケ月間,包装貯蔵)に於ても,(2)とほぼ同様の傾向を示した。(4)コーンウエイの微量拡散分析法により,貯蔵30日後の各試料の炭酸ガス発生量を測定し,酵母数の消長に伴う傾向のあることを認めた。(5)培養試験により,粉末ぶどう糖の酵母増殖遅滞作用は,酵母に対する栄養物質の影響ではなく,共存する微量物質によることを確かめた。(6)市販の数種粉末ぶどう糖試料を分析し,何れもpH3.80前後であることを認め,酵母増殖遅滞作用に影響する共存酸性物質を推察した。(7)イオン交換樹脂及び脱色炭により,粉末ぶどう糖液を再精製し,紫外部吸収を測定した結果,脱色炭処理の再精製液は,殆んど5-(Hydroxymethyl)-furfuralが除去されていたことを認めた。(8)予備実験的に,粉末ぶどう糖は,イオン交換樹脂及び脱色炭処理により,醗酵能が向上することを推察した。終りに,実験の一部を担当した研修生涌永君に感謝の意を表する。