生デンプンの貯蔵の際生ずる変敗発酵損失について,実験室的に検討した結果,30℃ に放置した場合,通常の生デンプンは1カ月間で5%を超えるロスを生じ5カ月後に15%,7カ月後には23%と直線的にロスが増大する。一方変敗発酵を起した生デンプンからの発酵液を分析した結果,その大部分が酪酸を主体とした揮発性酸であることが確認された。これらのことより生デンプンの変敗発酵は,生デンプン中に混入した酪酸菌によるものと推測される。また,ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを添加した貯蔵生デンフンは高温に長期間保存しても安定でありドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを0.1%添加したものは7カ月後においてもそのロスは5%以下であり,0.5%添加したものは更にロスが少く2%以下で卓効を有することから,ドデシルベンゼンスルフオン酸ナトリウムは生デンプンの変敗発酵原因菌に対して強い抗菌力を有し,これによって生デンプンの変敗発酵が抑制されるものであると推察される。この点については別に報告する予定である。