原料小麦粉が小麦澱粉製造に与へる影響を考察するため製粉履歴の異る各種小麦粉および貯蔵した小麦粉について分析,実験を行い次のことを明らかにした。1)小麦粉の灰分は製粉履歴および他の品質と密接な関係があり,澱粉製造上から重要視される澱粉,赤粕,白粕等の含量,水溶性損失,窒素収率等は灰分と関連して増減する。 2)小麦澱粉製造の面からは小麦粉は灰分の少いものほどよいが,蛋白含量の多い粉は灰分が多くなる傾向があるので,経済的には関連するグルタミン酸原料のグルテン収量をも考慮して撰択する必要がある。 3)原料小麦粉を倉庫に堆積して貯蔵すると澱粉収量窒素収率が次第に低下し,澱粉乳の起泡性が増加するが,変質に最も大きく影響する因子は気温が一定温度以上に達した時に起る小麦粉の発熱である。 4)発熱変質した粉の製造工程に与へる影響としては特に窒素収率の低下,グルテンの硬化,発泡性の増大が重要であるが,これらは小麦粉に石灰と微量の亜硫酸を加へる事によって直す事が出来る。