アミロメイズおよび普通トウモロコシデンプンに10Mradまでの高線量のγ線を照射した場合に生じる分解生成物の検索を行ない,両デンプンの分解の程度を比較した。 1)照射デンプンの理化学試験では,線量の増加につれてアミログラム粘度の急激な減少,ヨウ素呈色度およびpHの低下に照射影響が見られたが,X線回折図には変化が見られなかった。 2)照射デンプンのセファデックスG-75を用いたゲル濾過から,線量の増加につれてデンプン画分の減少が見られ,10Mradの照射でアミロメイズデンプンは約30%,普通トウモロコシデンプンは約50%の減少であった。 3)照射デンブンの冷水可溶性分および還元力は線量の増加につれて増加するが,10Mradの照射でもそれほど大きい値ではなく,アミロメイズおよび普通トウモロコシデンプンの冷水可溶性分はそれぞれ0.67%,1.46%であった。冷水可溶性分中の還元糖の割合は線量が増加しても約10%と変化が見られなかった。 4)冷水可溶性分中の炭水化物の分子量分布はアミロメイズデンプンと普通トウモロコシデンプンでは差が見られ,前者では高分子量領域の成分は非常に少ないが,後者ではデンプン画分からグルコース画分まで一様に溶出していた。低分子量成分の検索では両デンプンから重合度9以下の9成分が分離された。 5)以上の結果から,アミロメイズデンプンは普通トウモロコシデンプンよりもγ線照射による分解の程度が小さいものと考えられる。 終りに本実験を行なうにあたり,試料デンプンの提供をいただいた豊年製油株式会社に深謝します。またゲル濾過分析に御協力いただき,有益な御助言をいただいた食品総合研究所の貝沼圭二博士に深謝します。