ジャガイモ澱粉について, 温水処理後の試料および未処理試料のそれぞれにつき, 広い昇温速度範囲 (0.05-8Kmin-1) でDSC分析を行い, それらの糊化挙動を比較検討した. その結果, 糊化温度の昇温速度依存性は温水処理試料のほうが未処理試料に比べて大きいこと, また, 糊化開始温度および糊化ピーク温度は温水処理によって高温側に移ることが認められた. さらに, 温水処理試料の糊化熱 (吸熱量) として, 未処理試料の値 (4.3±0.17cal g-1) より大きな値 (4.7±0.17cal g-1) が得られた. これらのことは, 温水処理により澱粉粒内の分子配列が変化し (アニーリング), 澱粉粒の構造は熱力学的により安定な, そしてより均一な構造に変化することを示唆するものである.