本研究は、ハイテク・デバイス産業におけるベンチャリングのマネジメントについて、2つの事例を比較することにより、経営品質上の課題を考察するものである。両事例は、産業分野・産業階層、製品の応用分野・機能ともに極めて類似した分野での、ともにハイテク部品の開発・製造・販売事業である。そのような一見類似した2つの事業事例に対し、事業を支える中核的な技術としての「知」の進化の位相・特質と、ベンチャリングの人的「組織」の進化の位相・特質との関係性に着目して比較・分析を行った。その結果、これら「知」と「組織」の整合と相互増幅に基づく「共進化」が、事業の進展に大きく寄与したと考えられること、但し進化過程の様態は両事例では大きく異なることが分かった。事業を成功に導く経営品質確保には、事業の中核となる「知」の特質に依存する「共進化」過程への深い理解と洞察が必要である。