鶏ささ身 (60×30×10mm) を超緩慢凍結法 (約-0.30℃/min), 緩慢凍結法 (約-1.4℃/min), 液体窒素凍結法 (約-250℃/min) により凍結し, -20℃で3週間保存した. 解凍後真空調理 (75℃で15分間) を行い, 鶏ささ身の硬さをレオメータを用いて測定したところ, 緩慢凍結した鶏ささ身が最も柔らかく仕上がった. これは, 凍結時最大氷結晶生成帯を短時間で通過するほど品質が保たれるとする従来の説と異なっていた. そこで, その原因を検討した. (1) 凍結前および各種凍結保存後の鶏ささ身に対してSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い, 凍結速度および凍結保存の影響を検討したところ, 各泳動パターン間に顕著な差は認められなかった. また, 各Ca2+-ATPase比活性間にも有意な差は認められなかった. (2) 各種凍結後の鶏ささ身に対してクライオ走査型電子顕微鏡観察 (×200) (筋細胞の状態観察) を, また保存後解凍した鶏ささ身に対しては, 走査型電子顕微鏡観察 (×20,000) (筋原線維の状態観察) を行った. 筋細胞の状態は, 液体窒素凍結法, 緩慢凍結法, 超緩慢凍結法の順に氷結晶による損傷が大きくなった. 一方, 筋原線維の状態は, 緩慢凍結法による損傷が最も小さく, 急速凍結および超緩慢凍結した試料とも筋原線維間に空隙ができていた. (3) 凍結前および各種凍結法にて凍結後保存した鶏ささ身を真空調理し, 水分含量を調べたところ各試料間で有意な差はなかった. 以上のことより解凍後の鶏ささ身の筋原線維の状態が, 主として真空調理後の鶏ささ身の硬さに影響を与えるものと考えた.