高齢者の口腔内の状態と好ましい牛肉のテクスチャーの関連性を知るために物性の異なる牛すね肉(2×2×2cm3)の加熱時間を5~300分間に変えて硬さと凝集性の異なる5種を調製し,若年者を対照として官能評価を行った.高齢者の口腔内状態を歯の保存状態と咬合力によって評価し,I~IIIの3つのグループに分けた.高齢者の好ましいテクスチャーは牛すね肉の場合60分間加熱で,若年者の場合は60~180分間であった.高齢者には,長時間加熱は歯にはさまり,パサパサして飲み込みにくいなど,必ずしも適しているわけではない.さらに牛もも肉を5または15分間加熱しそれぞれに隠し包丁を入れたものと入れないもの合計4種の試料を調整した.この中で高齢者は,15分間加熱し切り込みをいれた肉を好ましいと選んだ.これは牛すね肉60分間加熱と同じテクスチャーであった.加熱時間と切り込みの有無による影響は歯の状態の悪いIIIのグループが強く影響を受けた.