アサリの冷凍による呈味や加熱による殻の開き方(開殻状態)について調べた.まず,アサリの活貝試料および-20℃で2 週間保存した冷凍試料をそれぞれ沸騰水中で加熱して熱水抽出液を調製し,熱水抽出液と加熱軟体部のエキス成分を分析した.熱水抽出液の遊離アミノ酸総量,ATP および関連化合物総量,およびコハク酸量は活貝試料と冷凍試料の間で有意差はみられなかった.一方で,活貝試料よりも冷凍試料の方がAMP,IMP,イノシンが多かった.熱水抽出液の官能検査の結果,冷凍試料の方がうま味が強く,総合的に好まれ,一方,活貝試料の方が生臭みが強かった.次に,-20℃または-40℃で8 週間まで冷凍したアサリについて,水からの加熱または沸騰水に投入して加熱の2 条件で加熱し,加熱後の開殻状態を調べた.-20℃および-40℃で2 週間保存した試料を水から加熱したところ,殻が完全に開いた貝はそれぞれ17%および27% であった.一方で,沸騰水中に投入して加熱すると冷凍温度,冷凍期間に関わらず,66%以上の貝が完全に殻を開いた.