カマスサワラ肉の味噌漬処理肉を調製, 保存して加熱後に官能検査および物性測定を行い, 未加熱肉における筋肉の崩れやすさおよびタンパク質の変化を調べた.また, 無処理肉および2%食塩添加肉も同様に保存し, 実験に供した.その結果以下のことがわかった. 1) 官能検査では, 保存期間が増すとともに味噌漬府の硬さは低下した. 2) 味噌漬肉, 無処理肉および2%食塩添加肉のテグスチュロメーター測定によって, テクスチュロメーター図形は, 保存中に異なった傾向を示した.硬さは味噌漬肉では, 保存初期に上昇し, 7日以降低下した.2%食塩添加肉では保存期間による硬さの低下はみられなかった.凝集性では, 味噌漬肉が無処理肉および2%食塩添加肉よりも低かった. 3) 味噌漬肉はホモジナイジングによって崩れやすくなり, 顕微鏡下の測定で肉の筋繊雑の長さの平均値は, 14日以降低下した. 4) 塩溶性タンパク質区分の抽出率は, 味噌漬肉においては保存期間を通じてほぼ一定であり, 無処理肉と2%食塩添加肉はやや低下の傾向を示した.アクトミォシン区分の抽出率は, 味噌漬肉においては, 保存期間を通じて大きな変化はみられなかった.水溶性タンパク質の抽出率は, 味噌漬肉では30%前後で保存期間を通して他の者よりもやや高かった. 5) 魚肉から抽出したアクトミオシン区分と水溶性区分の変化をSDS-PAGE分析によって調べたところ, 味噌漬肉のアクトミオシソ区分では, ミオシン重鎖が保存期間とともに減少し, より低分子量の成分が増加し, 分解が起こっていることがみられた.水溶性タンパク質では大きな変化はみられなかった.また, 生肉より抽出したアクトミオシン試料に味噌粗酵素液を加えて保存すると, ミオシン重鎖, アクチン, トロポミオシンが分解していることが示された.これらの分解は, 味噌中のタンパク質分解酵素の作用であることが推定された.