今回の調査の三つの目的に照らして, 大都市ニュータウン在住の雇用労働者夫妻の生活時間構造の分析を行ったが, それによると, 次のような特徴を指摘できる. 1) 夫の収入労働時間は, 過去に著者らが行った調査と比較しても非常に長く, それは勤務時間の長さのみならず, 通勤時間がとくに長いことに起因することが明らかになった.とくに夫の平日の収入労働時間が長いことは, 夫の家事的生活時間の増加をはばむのみならず, 平日の社会的文化的生活の絶対的短さに反映し, その内容を貧しいものにしている.さらに夫の平日の収入労働時間の長さは, 妻の家事分担度を高めている. 2) 著者らの3回の調査は「国連婦人の10年」の節目, 節目に行われたが, この10年, 東京都の雇用労働者夫妻の平日の家事的生活時間に変化はなく, 性役割分業が固定化されたままである. 3) ニュータウンに住む対象者の生活時間上の特徴は, 収入労働時間, 家事的生活時間にみられるもののほか, 社会的文化的時間において, (1) 平日の無職妻の時間内容が豊富なことと社会的活動時間が長いこと, (2) 休日の夫の運動・散歩, 娯楽が比較的長いこと, (3) 常勤夫妻の読書, 運動・散歩, 社会的活動一般の時間量が類似しているところに特徴がみられるなど, それぞれに今までの調査と異なる新しい動きが感じられた.