バタークリームを, バラ型と星型口金を用いてデコレーションとして絞り出したときの成形性について調べ, これらの成形性と原料 (マーガリン7種, ショートニング5種) をバタークリームにしたときの油脂のSFI, クリーミング価, 硬度などの測定値との関係を検討した. 1) マーガリン (1) バラ型によい成形性を与える攪拌終了時での油脂のSFIの範囲は10.0~13.9で, 星型では6.9~11.8であった. (2) 家庭用, ケーキ・料理用マーガリンのよい成形性 (バラ型, 星型) を与える攪拌温度は20~25℃で, 特殊なソフトマーガリン, 業務用マーガリン, それぞれ10~20℃, 25~30℃の低温側または高温側に温度範囲が移行した. 2) ショートニング (1) バラ型によい成形性を与える攪拌終了時での油脂のSFIの範囲は14.2~17.7で, 星型では10.6~14.7であった. (2) ショートニングの成形性に対する適性攪拌温度は統一性がなく, 試料ごとに適性温度範囲が大きく異なるので, 温度管理が重要であることが示唆された. 特殊な原料を除き一般にバラ型によい成形性を与えるSFIは星型よりも高い値での範囲であり, また適性攪拌温度もバラ型でよい成形性を得るには低温20℃がよく, 星型では高い25℃が望ましいことがわかった. SFIに代わる測定値としてクリーミング価より, 硬度のほうが相関係数が高く, バタークリーム化後の硬度でも十分成形性を評価しうる. マーガリンとショートニングの比較で, バラ型, 星型の双方ともに, マーガリンのほうがショートニングよりも低いSFIの場合によい成形性を与えた.すなわちマーガリンは固体脂が少なく, やわらかい性質でよい成形性が得られるのに反し, ショートニングではマーガリンよりも固体脂を多く必要とした.この相異は空気と固体脂による網目骨格構造の差によるものと推測されるが, その解明にはさらに電顕観察などが必要である.