鰹節の水だし汁を上手にとる方法の一環として, 水だし汁の調製時の鰹節浸漬中に起こる5'-IMP生成の機作について検討した結果, 次の知見が得られた. 1) 本枯節外層部の水だし汁に, 5'-AMPから5'-IMPを生成する作用が存在することが認められた.しかし, 煮だし汁にはこの作用はみられなかった. 2) 5'-AMP からの5'-IMPの生成作用は, 加熱により失活した.本枯節外層部の水だし汁に, 5'-AMPを基質とする5'-IMP生成酵素の存在することが推定された. 3) 5'-IMP 生成酵素は, 本枯節のかびつげ部に顕著に存在することが認められた.また, 本枯節の外層部にも若干の活性が存在した.しかし, 本枯節の内層部および裸節の外層部, 内層部には活性はまったく認められなかった.したがって, 本酵素は本枯節の「かびつけ」による微生物に由来する酵素であると考えられる.また, 鰹節の水だし汁浸出中のイノシン酸増加に関与する要因の一つとして, 本枯節のかびつけ部あるいはかびつけ部の微生物の影響を受けていると思われる外層部を用いることがあげられると考えられる.