サワラ生肉を味噌および調合味噌に48, 72および96時間漬け込んで調製した味噌漬け魚肉について, 官能検査と物理的特性値の測定を行った.次いで, エキス成分の調製および分析を行い, 漬け込み期間中の含窒素化合物の動態について検討した. 1) 官能検査の結果, 最も美味な味噌漬けを得るのに要する漬け込み時間は, 味噌のみの場合には72時間, 調合味噌の場合には48時問程度が適切であることが明らかとなった.また, 味噌および調合味噌に漬け込んだ魚肉は, いずれも生肉にくらべて硬さが増加した. 2) 味噌および調合味噌に漬け込むことにより, 遊離ならびに結合アミノ酸が著しく増加した.増加した遊離アミノ酸のパターン類似率を求めたところ, 味噌および調合味噌床との問に, 高い類似率が得られた.したがって, 増加した遊離および結合アミノ酸は, いずれも味噌床より魚肉中に移行したものと考えられた.核酸関連物質を始めとする他の含窒素化合物は, 味噌床中にはほとんど含まれないため, 味噌漬けによる魚肉の呈味向上には, これらの物質の寄与は少ないものと思われた.