1) 飯の糊化度は炊飯直後には加水比 (重量比) の多少にかかわらず95%前後を示したが, 炊飯24時間後には加水比の少ない飯ほど低い糊化度を示した.加水比の多少により, 糊化に伴う分子の分散の状態に違いがあり, その差が老化の進み方を左右したと考えられる. 2) 沸騰開始期の残存液量測定の結果, 加水比1.2倍以下では水の対流を伴う事実上の沸騰期はないと考えられる.また, 飯洗浄液中の糖の分解率は, 残存液中の糖の分解率より高く, 飯粒のまわりには, ある程度分解の進んだものが付着していると推察される. 3) 飯のテクスチャーは, 加水比1.3倍以上と1.2倍以下の飯では性状を異にしていることがわかった.加水比の少ない飯ほど鍋の部位による差が著しく, 水の対流を伴う沸騰期のないことによる影響が大きいと考える.また加水比の少ない飯ほど炊飯24時間後のテクスチャーの変化が著しく, 糊化度の低下に見合った変化を示した. 4) 飯の水分含有量は加水比の増加に伴い多くなる.鍋の部位間に多少の差がみられ, 鍋中心底部の加水比1.4倍, 1.5倍での増加は著しい.この部位の飯は脱水速度が大きく, 飯粒表面付近の動きやすい水分の増加と思われる. 5) 飯粒の大きさは加水比を増すに伴い大きい飯粒が増加する.鍋の部位間による差は加水比の少ない飯に顕著であり, 飯のテクスチャーと同様の傾向である. 6) 飯の色は加水比の増加に伴い黄色味が減少した. 7) 官能検査結果では, 加水比1.3~1.4倍が総合的に高い評価をうけた.しかし, 飯として好まれる性状をもたらす加水比の範囲には, かなり幅があり, 飯を評価する場合のむずかしさを再認識した.