心理的な快適さを与える被服についての知見を得るために, 理想的自己概念, 現実的自己概念と好きな被服, 嫌いな被服のイメージとの類似性を検討した.自己概念および被服のイメージの双方を評定できる形容詞対30項目を用いて測定した結果を因子分析し, 一般的望ましさと個性の二つの因子を抽出した.各被験者の因子得点の平均値をそれぞれ概念別に第1因子と第2因子で構成される意味空間にプロットしたところ, 理想的自己, 好きな被服, 現実的自己, 嫌いな被服の順にほぼ直線上に布置された.好きな被服のイメージは, 距離的には現実的自己概念に近いけれども, 理想的自己概念の方向に位置しており, それとは逆の方向に嫌いな被服のイメージが位置づけられた. さらに, 理想的自己概念と好きな被服のイメージとの関連性を検討するために, 別々に因子分析を行い, いずれも一般的望ましさ, 個性, 情緒性の3因子を抽出した.これらの因子間の相関を求めた結果, 一般的望ましさを理想的な自己と考えている者は, 一般的望ましさを与えてくれる被服を好む傾向があり, 個性的であることあるいは情緒的であることを理想としている者は, それぞれ個性的あるいは情緒的なイメージの被服を好んでおり, 心理的な快適さを与える被服として理想的自己のイメージを投影する被服があることがわかった.