高等学校における衣生活教育はいかにあるべきかを考えるために, 高校女生徒の家庭の衣生活管理の実態を調査し, 筆者らが昭和44年に実施した調査研究とくらべて, その間の変化と現状を把握しようとした. 調査結果は, 大要次のとおりである. 1) 家庭での洗濯方法は, 洗濯機の普及により, ほとんどの家庭が洗濯機と手洗いを併用している. 2) クリーニング店の利用度については, ワイシャツ, シーツなど洗濯機で洗えるものは, クリーユング店の利用度は減少しているが, 毛のスカート, セーター, ゆかたは利用度が大幅に増加している.今後も生活水準の向上, 有職の母親の増加により, 各種衣類の洗濯にクリーニング店の利用度は増加すると思われる. 3) 新洗剤や布地などについての情報源は, テレビによるというのが86%と最も多く, 家庭生活におけるテレビの影響力の強さを物語っている. 4) 衣類をどこで廃品とするかの調査で, 母親は下着類を前回より劣化の度合いの少ない段階で不用としていることが判明し, 衣生活の水準が上昇してきていることが推測される.高校生と母親を比較すると, 年齢の違いによる生活態度の違いがみられたが, その差は前回より減少している.また外出着を型が古いため廃品とする割合は前回より減少している.これは服の型や着方が多様化し, 個性化が進み, 自分の気に入ったものは流行にとらわれず永く着用する傾向の現れと思われる.一方, 上着類の虫害を受けたり, しみがついているため廃品とする割合は増加して, 衣類の手入れ, 保管の行き届かない状態を示している. 5) まだ着用可能な衣類の処理方法については, 「親類や知人にあげる」家庭は65.9%と最も多く, 次いで「しまっておく」となっている.「衣類以外のものに作りかえて用いる」割合は減少し, 「ごみとして捨てる」が増加している. 6) 既製服 (ワンピースドレス, ブラウス, スカート) を購入するさいの留意点については, 第1が「デザイン・色」で, 次いで「価格」, 「着具合」, 「材質」, 「仕立て方」の順で, 「取り扱いの難易 (取り扱いの絵表示を見る) 」は重視されていない. 7) 衣類に関する苦情では, 色落ちが最も多く, 次いで縫いつれ, 縫い代不足など.破損, クリーニング事故, かぶれなどの衣料障害もある. また衣類に関する苦情が生じた場合, そのままにして, どこにも苦情を申し出ない者が68.1%と多かった. 以上のような高校女生徒の家庭の衣生活管理の調査結果からみて, 高校の衣生活教育では, 消費者教育との関連を考え, 次のようなことに注意する必要がある. (1) 衣類が容易に入手できる豊かさの中で, 衣類を大切に取り扱う心が欠けてきていると思われる.資源の活用上からも衣類を大切にすることの必要を認識させ, 衣類の洗濯, 手入れ, 保管, またクリーニング店の利用などを合理的に行い, 衣類の使用価値を十分に利用できるようにする. (2) 衣類の製作, 補修などできる基礎的技術の習得は資源の有効な活用に必要である. (3) 衣類の購入, 衣類をどの程度で不用とするかの決定などについては, 家庭の状況を考え, 適切に判断し, 選択し, 決定することのできる能力を養う.不用衣類 (使用可能なもの) や死蔵衣類の処理方法を各自工夫すると同時に, 社会的な関心を養う. (4) 衣類を適切に選択・購入し, 合理的な取り扱いをするとともに, 問題が起こった場合の苦情処理の方法を知り, 解決を図っていく.苦情を申し出ることが企業に良質のものを作らせることになるという, 積極的な姿勢を身につけ, 消費者の権利を社会的に確立していく必要がある.