常圧および圧力炊飯した飯粒のクリオスタットによる切片を, ヨウ素ヨウ化カリウム溶液によって染色し, 光学顕微鏡で観察した. 1) 圧力炊飯した飯粒の縦断面では, 飯粒の中心部は円形に近い細胞がみられ, 外側に近い部分では細長い楕円形をしており, さらに表層では再び円形に近い細胞がみられた.飯粒の中心部はでんぷん細胞の形態を保持し, でんぷん粒, でんぷん複粒が密に存在しているのが観察された.飯粒の表層部はでんぷん細胞が一部崩壊していた. 2) 飯粒中心部は, 常圧釜の場合にはでんぷん細胞間およびでんぷん複粒間に空隙があり, でんぷん粒および複粒は膨潤していた。圧力鍋の場合にはでんぷん粒は常圧釜の飯粒の1.5~2倍となり, また空隙はでんぷん細胞間, でんぷん複粒間, でんぷん粒間に存在し, 常圧釜の飯粒よりも多くみられた.圧力鍋周辺部の飯粒には上記の空隙はほとんど観察されず, でんぷん粒, でんぷん細胞は膨潤していた. 3) 飯粒表層部は常圧釜の場合には中心部から表層近くまで, でんぷん細胞の形態は保持されていたが, 表層部では細胞壁, でんぷん細胞は崩壊されていた.圧力鍋の場合には, 細胞壁, でんぷん細胞, でんぷん粒の崩壊の程度が常圧釜の飯粒よりも大であった。とくに圧力鍋の周辺部の飯粒は表層のでんぷんが糊状になってヨウ素で濃く染色している状態が観察された. このように圧力鍋の飯粒は常圧釜の飯粒に比べて, でんぷん細胞の膨潤の状態およびでんぷん細胞の崩壊の程度が異なっていることが組織学的に観察された.