哺乳動物では油液は主として小腸から吸収される. マウスにおいても油液が吸収される場所はおもに小腸であろうと考えられる.本研究はマウスに経口投与した油液の一部分は胃からも吸収される可能性があるか否かについて組織学的に検討したものである. クロロフィルa, ビタミンAアセテート油, Art・9681 Fluorescinをそれぞれトリオレインに溶解した3種類の油液をマウスに経口投与したのち, 各組織切片を作製し, 蛍光顕微鏡によって観察した. 1) 10%ウレタン水溶液0.5mlの腹腔内注射によって麻酔状態になったマウスの幽門を結紮して各油液を別個に経口投与した.投与60~90分後には各油液が固有胃腺から吸収されて, 小網, 大網, 胃間膜, 胃脾間膜をはじめ, 胸管, 肺門リンパ管, 胸腺等に分布していることを蛍光顕微鏡像により明らかにした. 2) 幽門を結紮しない場合も, 油液は固有胃腺から吸収されて小網, 大網, 胃間膜中にびまん状ないし油滴状で分布していた.固有胃腺からこれらの組織に移行した油液は, その後, 幽門下結紮の場合と同様, 胸管, 鎖骨下静脈を経て血液により全身に運ばれるものと考えられる. これらの結果からマウスの胃からも油液が吸収されることが示唆された.