12月と1月に収穫しただいこんは, 7月, 8月に収穫しただいこんより, 煮熟により軟化しやすかった。だいこんを三等分したとき, 煮熟による軟化度は上部>中部>下部であった. だいこんのペクチンを3種類の試薬で分別抽出した.冬だいこんと上部は塩酸可溶性ペクチン (pA : 高メトキシルペクチン) の割合が, 酢酸塩緩衝液可溶性ペクチン (pB : 低メトキシルペクチン) やヘキサメタリン酸ナトリウム可溶性ペクチン (pC) の割合より多かった.一方, 夏だいこんや下部には pA よりも pB+pC の割合が多かった.ペクチンのエステル化度は冬だいこんや上部のほうが夏だいこんや下部より高かった. pA は中性溶液中で加熱すると} ランスエリミネーションにより容易に分解するので, pAを多く含む組織は細胞間接着力を減少しやすい.ヘミセルロースは冬だいこんや上部より, 夏だいこんや下部のほうに多く含まれていた. 煮汁のpHは冬より夏のほうが低かった. これらの結果から, 煮汁のpHやペクチンの組成やエステル化度が煮熟による組織のマセレーション (離解) に影響を及ぼしており, ヘミセルロースやセルロースは煮熟後の組織のかたさに影響を及ぼしていると考えられる.