本報では, 住宅における室内温熱環境の実態を把握するため, 室内温熱環境要素の季節別, 構造別の検討を行ったがその結果を要約すると次のとおりである. 1) 木造戸建住宅において, 夏期外気温は 25~35℃の範囲にあるのに対し, 室温は 27~35℃ である.冬期外気温は -1~11℃ にあるのに対し室温は 8~25℃ である. RC 造集合住宅は木造戸建住宅に比べ, 室温の範囲は狭く外気温の影響は小さい. 2) 室温が 29℃ 以上になるとクーラーの使用がみられ, 冷房温度は 25~27℃ となっている.また, 室温が17℃ 以下になると暖房器具の使用が多くみられ, 暖房温度は 18~25℃ となっている. 3) 黒球温度は室温とほぼ同じであるが, 夏期・南面室ではやや高くなり, 冬期・暖房時にはやや低くなる傾向がみられる. 4) 室温の上下温度差は, 非冷暖房時には小さいが, 冷房器具使用時には 3℃ 程度, 暖房器具使用時には 6 ~10℃ の差がみられる. 5) 主婦の在室時の平均室温は, 夏期主寝室は戸建住宅では 24~28℃, 集合住宅では 29~31℃ の範囲にある。DK・居間は 25~31℃ の範囲にある. >6) 一方, 冬期主寝室は 9~14℃, DK は 14~22℃ となっている.居間は 8~24℃ と範囲は広いが, 局所暖房器具のみの使用では室温は低いが, ストーブ等の使用では室温は高く, 暖房方法の違いによる室温の差が顕著にみられる. このように室温は建物の構造に加え, 居住者の生活行動・住まい方の違いが大きく影響していることが明らかになったが, 今後はさらに温熱環境要素の居住者への影響について検討を行い, その上で住宅における温熱環境の評価方法の検討を進めていく予定である.