1) 蒸らしをしている間の鍋内は90℃前後に保たれていた.このため鍋内の水分の急激な蒸発は避けられ, 一部は飯粒内に吸収され, 一部は徐々に蒸発していくようすが観察された.また, この間に鍋内の各部位の飯の水分含有率および飯粒の大きさの均一化も進むことが示唆された. 2) 飯の糊化度は蒸らしのない飯は炊飯直後の飯粒中心部が飯粒周辺部に比べ低い値を示したが, 蒸らしを 15分行った飯は飯粒中心部も外周部もほぼ同じ糊化度であり, 飯粒中心部まで十分に糊化するためにも蒸らしは必要であると思われた.飯粒組織の顕微鏡観察の結果もこれを裏づける結果となり, 蒸らしのない飯の中心部の組織は十分膨潤していなかった. 3) 赤外線水分計による飯からの脱水率は蒸らし時間の経過に伴い小さくなり, 飯粒内の水分は蒸らすことによりしだいに安定した状態になると推察された. 4) 飯のテクスチャーは蒸らすことにより, 粘りや弾力を伴ったかたさをもつようになる.顕微鏡観察による飯粒横断面のようすにも蒸らしの有無により, はっきりした差異がみられた.蒸らしを行った飯粒は中心部まで十分に膨潤し, 表層部には組織のくずれが観察され, このような状態がテクスチャーの変化としてとらえられたものと思われる. 5) 官能検査では水っぽさやかたさに大差を認め, 総合的には蒸らしを15分行った飯のほうが蒸らしを行わない飯より好ましいという評価を受け, 蒸らしの効果が明らかになった. 6) 蒸らす時間については, 水分含有率, 顕微鏡観察などの結果から, 本実験では10~15分が適当であると思われたが, 蒸らしを行う方法や鍋の種類などで異なると考えられるため, 今後検討していくつもりである.