著者らは, 市販緑茶を料理の素材として直接利用することを提案したが, この直接摂取が生体に与える影響を動物を用いて各方面から検討し, 安全性等の確認を行った. 実験動物は, 3週齢のウィスター系雄ラットを用い, 実験区は, AIN-76飼料を基礎とした対照区, 緑茶粉末を1% (1%区) および5% (5%区) 添加した区を設けた.飼育は28週間の長期にわたって実施し, 解剖, 血液の生化学試験等を行い, 以下の結果を得た. 1) 増加体重, 飼料摂取量は1%区が他の2区より有意に多かったが, 対照区と5%区は差がなかった.また, 飼料効率は3区に差はなかった. 2) ヘマトクリット, ヘモグロビンおよび血清鉄を調べた結果, 緑茶の直接摂取は鉄の利用性に悪影響は示さず, 緑茶中の鉄も利用されている傾向が認められた. 3) 解剖所見, 臓器重量, 消化管壁重量を検討した結果, 肝臓以外に3区に差はなく正常と考えられた. 肝臓は, 対照区が脂肪肝, 1%区が軽度の脂肪肝になっていたが, 5%区は正常であった.このことは, 肝臓の病理組織学的検索においても認められた. 4) 腹腔内貯蔵脂肪量を測定した結果, 対照区に対して1%区は p <0.05で, 5%区は p <0.01で有意に低値を示した. 5) 血清脂質, 血糖, 血清酵素等を検討した結果, 緑茶の直接摂取は血清脂質を改善する効果があることが示唆されたとともに, 肝臓, 腎臓等の機能に悪影響を与えることはなかった.また, 測定項目のすべてにおいて, 5%区は正常な値を示した. 以上のように緑茶の直接摂取は, 安全性が高いばかりでなく, 脂質代謝を活性化して肝臓および血清脂質, さらに貯蔵脂肪量を正常にするという有効性のあることが認められた.