野菜の柔組織中に散在する管束が煮熟によって受ける影響を組織学的に明らかにするために, タケノコとダイコンを脱イオン水と2%食塩水を用いて煮熟し, 光顕と電顕による観察を行い, かたさの変化と合わせて考察した. (1) タケノコはダイコンに比べて軟化しにくく, 食塩添加による軟化の促進も顕著に認められなかった. (2) タケノコの柔組織や管束鞘, 道管の細胞壁では, 煮熟による形態変化がきわめて小さいが, 師管壁では繊維成分の配列がゆるみ, 師管壁中に電子密度の高い凝集物を生じ, 煮熟による変化が観察された. (3) ダイコンの柔組織に散在する管束では, 師管と道管をとり囲む第1次壁は顕著なメタクロマジー反応を示し, 煮熟により著しく膨潤し, 緊張性を失ってきわめて軟化しやすいことがわかった.