大学生男女を対象として食品の購入から調理にいたる食事作りの行動を観察し, 調理時の行動について解析した. 1) 調理行動の中で女子学生が男子学生より多かったのは, 後片づけ, 切る, しぼる, 味つけおよび確認であった.反対に男子学生が女子学生より多かったのは, 揚げるおよび情報収集であった. 2) 複数の料理を同時に調理する程度を表す調理操作の料理間移行は, 女子学生のほうが男子学生より多かった.このことは, 女子学生は複数の料理を同時に調理することが多いことを示し, かつ各料理の調理操作をより構造化された手順で行っていることを示唆している. また, 後片づけを含んだ共通操作は女子学生が多かった.複数の料理を同時に調理することおよび後片づけは, 食事作り全体を見通して行動できるものであり, 女子学生はより明確化された手順で食事作りを行っていると思われる. これらの結果は, 食事作りの能力の要素に調理手順の構造化, 明確化というストラテジーの側面があることを示すとともに, 調理操作の料理間移行と共通操作の回数がストラテジーの様相を表す指標となることを表している. 3) 男子学生は女子学生より, 切る操作の種類が少なかった.また, 切った後の操作の少ない食品を多く使用し, 切る操作の出現時期が遅かった.この結果は, 切る操作の現れ方 (種類, 出現時期) が食品の選択を含めた食事作りに関する能力を表す指標になることを示している. 4) 食事作りにおける行動・使用食品などの相互関連を主成分分析によって検討した結果, 調理操作の料理間移行数, 切る操作数, 切り方の種類, 調味料の使い方が調理能力を表す主要な指標となることが示された.