満40~76歳の日本人成人女子88名を対象として, 中高年女子の「外形的肥痩」の検討を試みた.結果は以下のとおりである. (1) 身体の周径, 横径等の身体計測値から大きさのファクターを除去するように変換された17項目を用いてクラスター分析を行った結果, 個体は5クラスターに分類できた.そして, これは「外形的に痩せている」あるいは「外形的に肥っている」という「外形的肥痩」に基づく分類であることを確認できた. (2) 外形的肥痩により個体を分類するには, 変換された胸囲および上腕最大囲がとくに有効であった.若年女子では有効であると判断された下肢の周径が, 中高年女子ではそれに該当しないことが注目される. (3) 若年女子の場合と同様に, 中高年女子においても, 「外形的肥痩」と皮下脂肪厚とは直接的な強い関連性をもつまでには至らないことが確認できた.したがって, 「外形的肥痩」の概念は, 体密度に基づいて医学的分野で定義されている肥痩の概念と意味が異なり, 衣服を設計する分野独自のものと考えられる. (4) 外形的肥痩度の変化に伴うからだつきの変化を観察したところ, 肥りの傾向にある個体は痩せの傾向にある個体よりも体幹, 上肢が太く, 体重は重く, 身長は低いことが認められた.また, 胸囲, 胴囲の著しい相対的増加, 体幹の周径に対する頸の周径の相対的減少, 上肢の近位部周径に対する遠位部周径の相対的減少, という傾向も認められた. (5) 以上のように, 中高年女子について, 「外形的肥衣服設計の立場からみた中高年女子の肥り痩せの評価痩」の概念がもつ意味, および外形的肥痩度の変化に伴うからだつきの変化を把握することができた.