この研究は, 女子学生と中年女性を対象として服装規範に対する態度 (私的見解), 服装規範に対する世間の評価への想定である主観的規範 (社会的評価) および独自性欲求を測定し, (1) 服装規範に対する重要性の認知, (2) その認知の女子学生と中年女性による違い, (3) 服装規範に対する態度と主観的規範とのずれ得点の大きさと独自性欲求との関連性を検討した.服装規範に対する態度と主観的規範の測定は, 学校の制服, 場面, 職場, 性別, 年齢に関連した服装, 肌の露出, 和服の7因子について行った.各規範項目は「非常に大切」から「どちらかといえば大切でない」まで, 項目によってかなり大きく異なった評定がなされ, 服装に関する規範を, 厳しく認知されている規範から比較的ゆるやかに認知されている規範まで順序づけることができた. また, 服装規範に対する態度得点と主観的規範得点のずれを測定したところ, 中年女性よりも女子学生のずれ得点が大きく, 女子学生は服装規範に対してより自由な態度をもっていることがわかった. 次に, 独自性欲求を測定する28項目への反応に基づいて, 対象者を独自性欲求の高, 中, 低グループに分割し, 服装規範7因子について上記のずれ得点の各グループの平均値を算出した.この平均値が独自性欲求の高, 中, 低グループによって異なるかどうかを分散分析した結果, 服装規範7因子のうちの5因子に違いが認められ, 独自性欲求の強い者ほど服装規範に対する主観的規範と態度のずれが大きいことがわかった.さらに, 独自性欲求の高低によってすべての服装規範, 27項目に対する主観的規範得点および態度得点に違いがあるかどうかを分散分析した結果, 主観的規範得点に違いはみられなかったが, 態度得点に違いのあることが認められた.したがって, 上述の服装規範に対する態度と主観的規範とのずれの独自性欲求の高低による違いには, 主として態度得点の違いが寄与していることがわかった.